トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジアと日本はどうか。国際経済秩序が崩壊し、普遍的価値も推進力を失いつつある今、どうすればいいのだろうか。そこで考えておくべきことは、正常化バイアスを外して「常に最悪を考えて行動すること」=中国の習近平流に言うならば「底線思考」ではないか。(全3話中第3話)
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(2)米中対立の現在地
世界第一、第二の経済力を誇る米中の対立は由々しい問題である。第1次トランプ政権下で始まった対立はバイデン政権に継承されてきたが、トランプ第2次政権では主題はもっぱら経済に集中している。われわれも米中協議の行方を注視しつつ、グローバル課題や経済安全保障上の危機管理を見据える必要がある。さらに「台湾危機」については、リスクが間違いなく上がっており、「経済」に関する協議などとは別次元で注視する必要がある。(全3話中第2話)
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
トランプ第2次政権の始動により、冷戦後の世界史は大きな転換点を迎えている。それは政治面のみにとどまらない国際秩序の転換点だとも言える。その象徴ともいえるのが、2025年6月のイランへの核施設攻撃であり、トランプ政権の関税政策である。自国優先の経済政策、普遍的価値の軽視とその推進者としての役割の放棄、さらに独断専行の軍事力の行使。アメリカはこれまでの国際主義と決別したのであろうか。(全3話中第1話)