沖野郷子

東京大学大気海洋研究所教授/理学博士

プロフィール

<略歴>
1988年3月 京都大学理学部卒業
1990年3月 京都大学大学院理学研究科修士課程修了(地球物理学)
1999年1月 博士(理学)京都大学
1990年4月~1999年6月 海上保安庁水路部(現海洋情報部)
(1995年4月~1997年3月  科学技術庁研究開発局海洋地球課併任)
1999年7月~2002年12月 東京大学海洋研究所 助手
2002年12月~2014年7月 東京大学海洋研究所 助教授
2014年7月~ 東京大学大気海洋研究所 教授

<所属>
海洋地球システム研究系海洋底科学部門

<専門分野>
海底地球物理学

<研究テーマ>
中央海嶺プロセスに関する研究

<主な著作>
『海洋底地球科学』(中西正男著、沖野郷子著、東京大学出版会、2016)

講義一覧


地球だけに存在するプレートテクトニクスの限界と可能性

海底の仕組みと地球のメカニズム(8)プレートテクトニクスを超えて

プレートテクトニクスは1960年代半ばに生まれた考え方で、「地球の表面は固いプレートで覆われていて相対運動をしている」と考えるとさまざまな観測事実がうまく説明できるという。しかし、「ホットスポット」と呼ばれるハワイやアイスランドのような場所がなぜできたのかはうまく説明できない。また、「巨大火成岩岩石区」と呼ばれる巨大な溶岩の台地が地球の歴史上、何回もできているが、それもうまく説明できない。それはなぜか。そこにプレートテクトニクスの限界がある。もう1つ考えなければいけないのは、なぜ地球がプレートテクトニクスのシステムかということだ。鍵は海にあるかもしれない。そこに今後の研究の面白さがある。(全8話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


背弧海盆と南海トラフの謎――なぜ沈み込みが始まったのか

海底の仕組みと地球のメカニズム(7)背弧海盆と南海トラフの謎

「背弧海盆」といわれるシステムがある。日本周辺には水深が異なる盆地のような場所が複数存在する。プレート境界で沈み込みが起こったときに火山ができるが、火山と海溝の反対側にある「背弧」と呼ばれるところに小さい中央海嶺のようなものができる。しかし、そうした小さな海底拡大のシステムについてはいまだによく分かっていない。これが1500万年ほど前に沈み込みが始まった南海トラフの謎にもつながっている。(全8話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


マルチビーム測深機によって飛躍した海底探査の精度

海底の仕組みと地球のメカニズム(6)マルチビーム測深機と自律型ロボット

衛星高度計では分解能はそれほど高くないため、船で調査する必要がある。その場合、船から音波を出して測るのだが、現在は「マルチビーム測深機」で水深の3~4倍の幅で一度に測ることができる。ただ、どういう溶岩が流れているかなど詳細までは分からないため、自律型ロボットの測深機を海中に入れて測る。そうすると、非常に細かいデータが収集できるという。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


地球が火星よりも地形探査が困難な理由

海底の仕組みと地球のメカニズム(5)海底調査の実際と衛星高度計

では実際にどうやって海底の地形を調べるのか。地球は火星よりも地形探査が困難だが、それは海があるからである。地球の深海底は非常に探査のしにくいところで、現在使われている地図も水深を推定したものだという。そこで「衛星高度計」を使って海面を測る方法が取られているのだが、海底にある山の高さまでは正確に分からないので、現地での調査には危険を伴うことも少なくない。(全8話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


中央海嶺が経済的価値のある「熱水鉱床」になりにくい理由

海底の仕組みと地球のメカニズム(4)熱水鉱床と中央海嶺の場所

海嶺には温泉が湧いている場所もある。海底をつくっている玄武岩に含まれる重金属類が海底下で高温の海水に溶けて循環し,再び海底に噴きだして沈殿する。それが「熱水鉱床」といわれているもので、資源のもとになっているが、中央海嶺では経済的な価値という意味では非常に資源になりにくいという。それはなぜか。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


なぜ大西洋と太平洋とでは海底の顔立ちが異なるのか

海底の仕組みと地球のメカニズム(3)中央海嶺の実態

大西洋と太平洋では海底の顔立ちが大きく異なるという。地球上でプレートが一番速く動くところは年間15センチほどで、太平洋にある。一方、大西洋は年間2~3センチほど。速く動くところは周辺が暖かいので、断層ができにくく起伏は緩やかだが、ゆっくりしか動かないところは噴いた後すぐに冷えて断層ができるので、起伏に富んでいる。では噴いたときにできる岩にはどんな特徴があるのか。世界の地震の場所やその特徴と合わせ、中央海嶺の実態について解説が進んでいく。(全8話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


地温勾配とソリダス――中央海嶺ができる仕組みに迫る

海底の仕組みと地球のメカニズム(2)なぜ海底で火山ができるのか

なぜ「中央海嶺」と呼ばれる海底が生まれるところが火山になるのか。よく誤解されるのは、マントルが上がってくる、その上昇流があるからそこに火山があるということだ。そうではなく、沈み込むプレートの動きで隙間ができるので仕方なくそこを埋める。これが「中央海嶺」のシステムだという。ではその火山はどうやってできるのか。「地温勾配」と「ソリダス」という温度に関するキーワードについて解説しながら、中央海嶺ができる仕組みに迫っていく。(全8話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の理論動向まで解説するシリーズ講義。第1話は、地球全体の火山活動の8割が起こっているという「中央海嶺」を中心に、海底の生まれるところについて話を伺った。(全8話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)