川上浩司

京都先端科学大学教授

プロフィール

1964年生まれ。
京都大学工学部在学中は人工知能について研究。
同修士課程修了後、岡山大学の助手をしながら博士号を取得。
その後、京都大学へ。
人工知能や進化論的計算手法をシステムデザインに応用してきたが、
京都大学共生システム論研究室に配属後、人と人工物の関係を考え直し、
「自動化」に代わるデザインの方向性を模索中。

研究テーマ:共生システム論、不便益、知的システム設計

主な書籍:
『不便益のススメ: 新しいデザインを求めて』 (岩波ジュニア新書、2019)
『不便益という発想~ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?』(インプレス、2017)
『不便から生まれるデザイン: 工学に活かす常識を超えた発想』(DOJIN選書, 2011)

※不便益システム研究所
・facebook
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講義一覧


「のらカフェ」は「不便益×食」から生まれたアイデア

不便益システムデザインの魅力と可能性(7)不便益の意義と発想方法

「不便益」という考え方は近年、大きな注目を集めている。日本で唯一のインダストリアルデザイナーの全国組織である日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)では、2017年から連続して学生コンペのテーマに不便益を設定している。「おそうじカレンダー」や今では町でよく見かける「のらカフェ」などが提案されているが、そこでは美しさや機能性だけではなく、不便益という視点を取り入れることが必要とされているのだ。(全7話中第7話)


ビブリオバトル、るるぶ創刊号の旅…不便を楽しむアイデア

不便益システムデザインの魅力と可能性(6)不便益デザインの実践:コト編

不便益が活用される対象はモノだけにとどまらない。例えば「ビブリオバトル」や「京土産」、「るるぶ創刊号の旅」など、イベントやツアーといった体験や経験という「コト」の分野でも十分に生かすことができるのだ。前回の講義に引き続き、日常にある便利な事象を不便益デザインに変えていく実践が紹介される。(全7話中第6話)


「素数ものさし」は4万本売れた大ヒット不便益商品

不便益システムデザインの魅力と可能性(5)エモーショナル・デザインと不便益の活用

ユーザビリティデザインを説明する際に「アフォーダンス」という概念を参照したD.A.ノーマンが、次に提唱したのが「エモーショナル・デザイン」である。この概念と不便益は同じ方向を向いている。そこで不便益を生み出すための要素を参考に、身の回りのさまざまな製品を不便益デザインに変えていく試みが行われている。中でも京都大学の生協で販売している「素数ものさし」は、4万本も売れた大ヒット商品で定番のお土産になっているという。いったいどんな不便益があるのか。その他、いくつか活用事例を紹介しながら、不便益デザインの魅力を解説する。(全7話中第5話)


「不便益」認定の3つの条件とアフォーダンスの考え方

不便益システムデザインの魅力と可能性(4)不便益を理論的に考察する

さまざまな分野で用いられている不便益デザイン。しかし、不便であってなおかつ益があればそれは直ちに不便益とみなせるのだろうか。不便益として認定するためには、3つの条件を満たす必要があるという。さらに、不便益における益の性質を考える際には、「アフォーダンス」という概念は参考になる。(全7話中第4話)


リハビリ施設、保育園、観光…不便を積極的に活用した好例

不便益システムデザインの魅力と可能性(3)多方面で活用される不便益

「不便益」のデザインは、リハビリ施設や保育園、企業や国際支援など、さまざまな分野で実際に活用されている。それらは単に製品に組み込まれているだけではなく、組織マネジメントやマーケティング施策にまで応用されている。不便であることがどのように生かされ、どのような益が生まれているのか、実際の事例から見ていこう。(全7話中第3話)


写ルンです、おやつ300円まで…不便がもたらす益の数々

不便益システムデザインの魅力と可能性(2)不便がもたらす4つの益

不便で良かったことは思いがけないところにある。それは便利なときには気がつかなかったり、見過ごされていたりするものだ。就職氷河期の時の話やバックパック旅行の思い出など、学生が経験した事例をもとに、不便によってもたらされる益とはどういうものかを説明し、それらを4種類の益に分類する。(全7話中第2話)


「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心

不便益システムデザインの魅力と可能性(1)「便利・不便」「益・害」の関係

「不便益」とは「不便だからこそ良いことがある」ということで、そうしたこと・モノなどを指す言葉である。テクノロジーの進化によって、私たちの生活は日々便利になっている。多くの手間や時間が省かれ、人びとの生活水準が向上する一方、時にその利便性が害になることがある。「便利=益」「不便=害」というかつての認識に対して、ユーモア溢れる豊富な事例を紹介しながら「便利・不便」「益・害」の相互関係を再考する。その結果、見えてくるのは、不便なことが生活を豊かにする例、つまり「不便=益」があるということだ。(全7話中第1話)