田村潤

元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表

プロフィール

1950年、東京都生まれ。
成城大学経済学部を卒業後、1973年、キリンビール株式会社に入社。
岡山工場労務課をスタートに、1995年、高知支店支店長、その後、四国地区本部長、東海地区本部長を経て、2007年に代表取締役副社長兼営業本部長に就任。全国の営業の指揮を執り、2009年、9年ぶりにキリンビールのシェアの首位奪回を実現。
2011年より「100年プランニング」代表。

著書に、
『キリンビール高知支店の奇跡~勝利の法則は現場で拾え!』(講談社)、
『負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった一つの方法』、
『人生に奇跡を起こす営業のやり方』(以上、PHP研究所)がある。

講義一覧


新しい価値を提供して既得権を打ち破るのが企業の使命

日本企業の病巣を斬る(12)最大の既得権とは

現代社会で一番どうしようもない状態になっているのが既得権の問題である。この問題を解決できないと、日本も世界も、どの国の経済も、いい状態に戻ることはできない。そして今、最大の既得権となっているのは、社会保障である。この問題に切り込むことができるのはやはり企業しかない。イノベーションを起こし、新しい価値を提供することが企業のあるべき姿である。既得権を圧倒するものを世に示して多くの人の賛同を得る。これができるものこそ「知識創造企業」である。(全12話中第12話)


なぜ日本の従業員の会社への愛着は世界最低クラスなのか

日本企業の病巣を斬る(11)みんなが「おかしい」と感じている

「いい加減」「適当」「暗黙知」といったことこそが、日本人が持っている非常にいいところ、素晴らしいところであった。それを、コンプライアンスをはじめとしたアメリカンビジネス追従によって、壊してしまった。そのことが、現代日本の大きな病巣になっている。また、昔の企業は家族主義で、愛があった。しかし、今はそれもなくなってしまった。そのため、会社へのロイヤリティが下がり、従業員のエンゲージメント(会社への愛着や貢献の意志)も、日本は世界最低クラスになってしまった。そして、やっているのは物まねばかり。つまりオーバーアジャスメントである。日本には本来、数字も大儲けも要らなかったはずだ。人の役に立てば儲かる。それは結果論なのである。(全12話中第11話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


誇るべき自分へ…「使命を自分が果たす」と自分で決定せよ

日本企業の病巣を斬る(10)会社の使命を自分の使命に

アメリカの企業と日本の企業はそもそも成り立ち、性質が違う。アメリカの企業は株主が「金儲けのために作った」のに対し、日本の企業は「どういう儲け方をしたか」を問う歴史伝統に立脚している。日本人はそこに戻る必要がある。それには自分の会社が何のために存在しているかを突き詰め、「その使命を自分が果たす」と決定することが大事である。そのうえで体を動かしていると、会社の使命もわかってくる。しかし、そこで今は労働基準法の問題が出てくる。それを乗り越えるためにも、「理念への思い」が重要になる。(全12話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


数字を追いかけるな、説明責任を求めるな…共感経営への道

日本企業の病巣を斬る(9)社会的共感経営の実現

野中郁次郎氏の唱える「知識創造企業」を築くには、「暗黙知」の活用と、地域やお客さんとの「共感」が重要である。まさに「共感経営」が重要だが、そのためには、数字を追いかけたり、説明責任を求めたりするのが間違いだとわからなければいけない。戦前の岩波書店が出版社として成功したのは、「社会的共感経営」を行ったからである。それゆえ、戦前の知識人の共感者を増やすことができた。そうした企業が1社でも2社でも出てくれば、必ず周囲も変わってくる。(全12話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


次善を求めよ…ありえぬ「最善」や「絶対正義」を求める愚

日本企業の病巣を斬る(8)「次善」を求める

この世には本来、「最善」などない。必ず欠点がある。それは企業も同じこと。よって「次善を求める」精神が確立してくると、オーバープランニングやオーバーアナリシス、オーバーコンプライアンスの問題も解決に向かう。しかし、今の社会現象を見ていると、「最善」ばかりを求めている。現実を受け入れないから、コンプライアンスなどの問題は行くところまで行ってしまう。一方、野中郁次郎氏は、優れた企業を哲学的に捉え、知識創造企業が企業として一番のあり方だと述べた。知識創造を日本企業がやる場合、大事なのはやはり「暗黙知」である。(全12話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


創造的経営の核心…「個人の信念」を真実として正当化する

日本企業の病巣を斬る(7)信念と創造的経営

理想や使命へ向かうと「自分がこうやりたい」というものが出てくる。それぞれに正解を見つけていくしかないから、おのずと自分の持ち味が発揮されるようになる。ところが、現在の日本の企業社会では会議ばかりを重んじるあまり、「暗黙知」が出にくい社会になっている。会議では「形式知」で議論するしかないからだ。これが日本社会を苦しめている。野中郁次郎氏は1995年の『The Knowledge-Creating Company』(日本語版『知識創造企業』1996年)で「創造的経営」を説いたが、その核心は、「個人の持つ信念を真実へと正当化していくダイナミックな社会的プロセス」にほかならない。(全12話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


理念と使命感と塩梅…組織や数字の奴隷にならない生き方

日本企業の病巣を斬る(6)組織の奴隷にならないために

企業の「勝ち負け」は、相手を蹴落とすこととは違う。それは「いかに顧客の心をつかむか」の競争であり、「顧客の心をつかむ」のは「勝ち負け」とは関係ない。顧客の心をつかむことで得られるのは満足や愛である。理念の実現に向かっていくと敵味方という考えはなくなる。一方、企業内ではよく「数字を達成しなければいけない」といわれるが、その数字自体が間違っている可能性もある。それを見極めるのが教養や知恵で、そのためにも心と物質社会の動きを切り離して考える習慣をつけることである。企業では本社から指示が出るが、その指示に対して「自立」していないと組織の奴隷、数字の奴隷になってしまう。(全12話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


暗黙知と形式知…「使命感や恩」で心を燃やすのが日本の道

日本企業の病巣を斬る(5)暗黙知と形式知

欧米の企業と日本の企業の違いは、欧米が数値目標を求めるのに対し、日本はお客さんに喜んでもらうことに主眼を置く。これは野中郁次郎の言うところによれば、日本は「暗黙知」であり、一方、欧米の理論は「形式知」である。「暗黙知」は「次善の策でいい」「適当にうまくやる」という部分もある。しかし、昨今の日本は「最善のもの」を求めるがあまり、「最悪」になっている。一方、「暗黙知」は、理想や理念に向かわないと既得権のようになりかねない面もある。(全12話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


オーバープランニングやオーバーアナリシスをどう変えたか

日本企業の病巣を斬る(4)全社改革の断行

多角経営で失敗するのは、「足るを知る心」や「わきまえ」がないからである。物質には限界があるが、心は無限に成長できる。その点をふまえずに、ライバルメーカーの真似ばかりして成長しようとしても、うまくいくはずがない。「心」や「理念」の重要性を、しっかりと理解する必要がある。では、田村氏がキリンビールの副社長に就任したときに、オーバープランニング、オーバーアナリシスの問題をどのように変えていったのか。具体的な方法を語る。(全12話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


最善が堕落したものは最悪である…無限なのは理想や魂のみ

日本企業の病巣を斬る(3)足るを知る

日本の企業には伝統的な成功パターンがある。三井越後屋は地域密着型の商売を行い、300年繁栄を続けているが、これは当主が「足るを知る」をわきまえていたからだ。ローマ帝国の有名なことわざに「最善が堕落したものは最悪である」というものがある。たしかに理想や魂は、本来が無限のものだから、その最善を追い求めるのはいい。だが、その理屈を肉体や物質社会や経済成長に当てはめると、逆効果となってしまう。つまり、「最悪」になりかねないのだ。(全12話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


予算、人員…制約を乗り越えるところから自由は出てくる

日本企業の病巣を斬る(2)「商売の原点」に戻る

「なぜ売れないか」をデータから分析しても正解は出てこない――かつてキリンビール高知支店はこの問題に直面していた。必要なのは、人の心の流れを市場全体の流れとして捉えることで、「お客さんのため」に行動することだった。そこで高知支店は「県民全員の幸せ」を目標にして成功する。そもそも現実的に全員を幸せにするのは不可能だが、不可能だからこそ自由が生まれた。自由は制約を乗り越えようとするところから出てくる。予算や人員に制約があるからこそ、それを工夫で乗り越えようとして、自由を手に入れるのだ。そこにおいて求められるのは、「商売の原点」に戻り、「会社の使命は何か」を問うことだ。(全12話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


無理なプランや数値目標を指示されると現場の力は弱くなる

日本企業の病巣を斬る(1)日本企業の4大疾病

日本企業の病巣に「オーバープランニング(過剰なる計画)」「オーバーアナリシス(過剰なる分析)」「オーバーアダプテーション(過剰なる法令順守)」がある。これは経営学者の野中郁次郎氏が提唱したものだが、これに「オーバーコンプライアンス(過剰適応)」を加えたのが「日本企業の4大疾病」である。これらが、いかに日本の企業の現場を苦しめ、弱体化させているのだろうか。また、なぜいま日本企業の大きな問題になっているのだろうか。そして企業の本質とは……。両者の立場から、問題の本質を探っていく。(全12話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


自分の幸せと業績向上の好循環を生むフローチャート

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(8)成功のプロセス

キリンの実例をもとに作成したのが「自分の幸せと業績向上の好循環を生むフローチャート」である。高知支店でまったく売れない状況に置かれたなかで、会社の存在意義について「自己との対話」を重ねた結果、「会社の使命を果たす」と決めた。そこから行動が始まり、「お客様のために」と夢中で働くなかで、自分と世界が一体化する感覚が生まれ、好循環が生まれていった。会社全体が「使命を果たす」に向かったことで、精神を病む人や不祥事を起こす人は激減した。使命という「一番高いところ」をから考えて行動することで、あらゆる問題は解決されるのである。(全8話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「なぜ売れないのか」は追及せず、今と将来だけを考える

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(7)幸せの正体とは

キリンビールの東海地区の営業責任者だった時代には、毎週月曜日に全員にメールを出し、今週やる仕事の意味と「使命が果たされた現場」の様子を伝えた。これによりどう動けばいいかがわかり、情報を共有することで刺激を得られ、より良いアイデアが出るという好循環も生まれた。また、「なぜ売れないのか」などといった過去を追及しなかったことも好評だった。実際、業績向上に必要なのは過去ではなく、今と将来を知ることなのだ。幸せと業績が両立するようになると、キリンでは経費が3割下がり、ワークライフバランスもよくなった。(全8話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「理念」は言葉ではない、「挑戦」をしつづけることである

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(6)幸せと業績の一体化とは

使命を果たすために大事なのは、行動である。行動しているうちに何かが潜在意識にたまり、やがて顕在化して、よい結果をもたらす。行動に至るパターンはさまざまだが、最大の動機は「幸せになりたい」だった。名古屋では使命を果たすために組織や仕事のやり方を抜本的に見直した。「使命」に向かって挑戦しつづけることで、驚くほどに知恵や工夫が出るようになり、数字も上がっていった。この過程を通じて、彼らは幸せを得られた。まさに業績向上と個人の幸せが一体化したのである。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「相手のロジック」を考えて改革する…使命であれば諦めない

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(5)相手の内在的な論理を把握する

「仕事の定義を変える」「お客様に喜んでもらうことを使命にする」といっても、みんなに納得してもらえるわけではない。では、どのように仕事を進めていくべきなのか。大事なことは、「相手のロジック」に乗っかることである。相手のロジックを理解したうえで、情報を提供し、提案していくのである。このとき原動力となるのも、やはり「使命」である。「お客さんのため」だと思えば、諦めずに説得をしていける。そしてお客様を思って行動すれば、数字が上がるのは必然である。それなのに行動しない人は、自分への信頼がないからである。そんな人も、集団が変われば変わることができるし、自己信頼感も生まれてくる。ここで幸せと業績の向上は一体となる。(全8話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


使命を果たすためには「自由」が必須…だから幸福になれる

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(4)自由でなければ始まらない

実は、「使命を果たすこと」を目標にすると、「自由にせざるをえなくなる」。なぜなら、たとえば「お客様に喜んでもらう」ことを使命と考えた場合、お客様は百人百様なので、全部正解が違うからだ。だからこそ、「使命を果たす」という目標だけを与えて、「そのためには何をやってもいい」と自由に任せるのである。すると、会社の奴隷のような状態から解放されて、幸せになっていく。だが、「数字」を目標にしたら、失敗する。そうではなくて、お客様に喜んでもらえたら、利益は必ずどんどん後からついてくる。しかも、使命を果たして誰かに喜んでもらうことが、日本人には最強のモチベーションになる。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


1年分の営業予算が3カ月で枯渇…そこからどう逆転したか

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(3)「打つ手が全部当たる」境地とは

お客様に聞きに行く…とひと言でいうが、実際には難しい。最初は、「何を尋ねればいいのか」からわからなかった。また、得意先の要望を聞いているうちに、1年分の予算を3カ月で使い果たしてしまった。これは大失敗で、本社からも怒られた。だが、だからこそ、チームの皆が、知恵と工夫を本気で出すようになった。正しい戦略よりも「実行力」が重要であり、「実行力」を高めるためには「個別の判断能力」が不可欠だが、間違いなく、それが高まった。かくして、「打つ手。打つ手が、全部当たる」という状況になっていくのである。(全8話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「お客様のため」に心が向かうとイノベーションも起きる

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(2)どうすれば好循環が生まれるか

「自分は自分、人は人」というエゴイズムから、どうすれば脱却できて、好循環に持っていけるのか。田村潤氏は、「自分の利益を超える『1つ上の概念』に向かうことが大切だ」と説く。それこそ、企業の「使命」なのである。なにしろ、企業の「使命」は絶対に実現できない。しかし、「不可能なこと」に向かうからこそ、イノベーションも起こるのである。では、どうすればイノベーションを起こせるのか。まずは、現場にどんどん出て行って、どんどん聞いていくことから始まるのだ。(全8話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「使命観=パーパス」に立脚できないのは自分のエゴのせい

キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(1)悩みの99%は他者との関係性

いのちの電話にかかってきた内容を2万件調査したところ、その99%以上が「自分と他者との関係性」での悩みだったという。一方、あるコーヒーチェーンの話では、仕事に喜びを感じるのは、「お客さんから喜ばれる」「ほかのメンバーからリスペクトされたい」ということであった。たしかに、そもそも会社が存在できているのは、その商品を買ってもらって喜んでもらったりするなど、社会の役に立っているからである。だから、お客様のためを思って仕事をすればお客様に喜ばれ、そこに幸せを感じるはずなのだが、なぜそうならないのだろうか。なぜお客様のためを思って仕事ができないのだろうか。そこには「自分は自分、人は人」というエゴがある。会社の本来のあり方が機能しないメカニズムが、そこから生み出されてしまうのだ。(全8話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


名将たちほど敵を怖れ、窓際族は自信に満ちている

自信について(12)自信を持ったら「ただのバカ」

日本人は「自信を持たないこと」が素晴らしい活動のできる根源だった。それは、皇室や家制度があって、尊いものが常に自分の上にあったからこそのものだった。また、理想を掲げていれば負けても「誇り」を持てるが、「自信」は勝ち負けである。その自信が、戦いに負ける原因にさえなる。日露戦争の名将たちは、みな敵を怖れていた。しかし、日露戦争に勝って自信を持ってしまったため、大東亜戦争で日本は狂信的になり、負けた。過去の歴史に「自信」を持ったら「ただのバカ」である。考えてみれば、窓際族はみな、自信がすごい。(全12話中第12話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


伝統は「これを日に新たに救い出さなければ」ならぬもの

自信について(11)絶えず挑戦するのが「保守」

たとえば売上げ目標を「前年比102」などにすると、実際には「100」にも到達しない。リスクを侵さず、去年と同じやり方でやろうとするから、時代の変化についていけない。伸びる組織は自分たちで工夫して、イノベーションを起こしている。それは「もっと役に立とう」という「理念」に向かうからこそ、イノベーションは起きる。小林秀雄は「伝統は、これを日に新たに救い出さなければ」ならないものだと語った。まさに不断の挑戦こそが「保守」の核心なのである。(全12話中第11話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


松下電器の製品には「人間の心」が入っていた

自信について(10)人助けが商売の儲けにつながる

現在、ビジネスで大きな儲けを出した創業者たちが、何十億円もかけて宇宙旅行に行っている。これは明治の成功者とは大違いだ。なにしろ明治の成功者たちは、美術事業など日本の役に立つお金の使い方をしていた。財産を使うのも、教養なのである。また、松下幸之助などは、事業においても「役に立つこと」「人助け」を軸に置いていた。戦後の松下電器の歴史は、「女性解放」の歴史である。そして、松下電器の製品が売れたのは「人間の心」が入っていたからでもあった。(全12話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「質」も「量」も追求して成功した岩波書店・岩波茂雄

自信について(9)「質」と「量」のバランス

「量の文明」が席捲するなかではあっても、「質の追求」は誰でも日常生活でできる。ただし、限界はある。質は、量が増えるとダメになるという相関関係があるからである。だが、大正から昭和初期にかけて、見事に「質」と「量」を両立させた人物がいた。岩波書店創業者の岩波茂雄である。岩波茂雄は、「ヨーロッパの最も高い知識を日本に植え込まなければ日本は発展しない」という思いで出版活動に邁進し、大量に売れる種類の本でなくても見事に売り抜く仕組みをつくりあげたのだ。それを可能にするのは、「なんとしても成し遂げる」という執念であろう。(全12話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


自分のためだけの自己実現の「強烈な虚しさ」は何か?

自信について(8)自分の「道」はどうすれば見つかるか

自分の「道」はどうすれば見つかるのだろうか。自分本位の「自己実現」を果たしたところで、「強烈な虚しさ」を感じるだけになりかねない。「量の追求」を求める現代社会では、「道」を見つけるのは難しい。だが、キリンビールでは全員が「道」を見つけたという。それは一番高いレベルに向かったからであった。向かっているあいだに「これが自分だ」と感じる瞬間がある。それが「道」なのだ。あるコーヒーチェーンではアルバイトが「どうしたら幸せになれるか」という議論をしている。多い回答は「お客さんに喜んでもらいたい」で、「いきいき生きる」と「誰かのために尽くしたい」は、じつは「道」に近いものがある。(全12話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


どうして「ズルをする人生」を選んでしまうのか

自信について(7)仕事に「苦悩」はあるか、ないか

現代人は文学を読まなくなり、教養も失った。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』を薦めてみても、何が書いてあるかわからない(恋愛文学であることもわからない)人ばかりになってしまった。人間は理想を追求しつづけられる人と、ズルをしてしまう人に分かれる。ズルをするのは、「楽」が好きな人である。ただし、理念を追求することで「苦悩」するのかどうかは、企業と個人とでいろいろな考え方もある。ただし、理想に向かって行動していく自己信頼の高い生き方は、現在の日本では難しいかもしれない。何しろ、国家が「他に頼ってばかり」で「嘘」をついているのだから。(全12話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


すべての評価が「量」になれば人間はみんな自信を失う

自信について(6)精神論は人間にとって一番大切なもの

一昔前の英米人は、「仕事」と「信仰の生活」とは別ものだった。だからこそ、ビジネスは「金儲け」だと割り切っていた。アメリカの寄附文化も、単に仕事を引退した人が、キリスト教の世界に戻って、慈善を行っているだけである。日本の場合は、仕事そのものが「道」を目指すものであり、「世のため人のため」を考えていた。だから引退後に慈善活動をする必要がなかった。だが現代は、欧米も日本もそうした精神を失い、「質」ではなく「量」を求めるようになった。評価が量になった結果、誰もが自信を持てない時代になってしまった。(全12話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


西田幾多郎と魂の苦悩を共有する時間を持ったことへの共感

自信について(5)西田幾多郎の本の魅力は「永遠の苦悩」

「自分が進む道は、これだ」「うまく行くかはわからないけど、やってみる」……その境地に達するために大切なのは「初心」や「原点」の歴史を知ることである。しかし、それによって「憧れ」は抱けるようになっても、「自信」を抱くことはできない。たとえば哲学者の田邊元や西田幾多郎の全集を読んだとしても、「これで自分は、哲学をマスターした!」などということにはならない。そうではなくて、「魂の苦悩を共有する時間を持った」ことへの共感や愛情を持つのだ。それが、自己信頼に結びついていく。(全12話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「会社の善なるもの」と「個人の善なるもの」が共鳴する

自信について(4)大和魂のあり方を問う『源氏物語』

企業理念の実現に向けて行動すれば、会社はよいほうに向かいだす。行動するために必要なのは「勇気」だが、じつは勇気を持つのが一番難しい。勇気を理解するには、民主主義や平等思想などを1回捨てて、「魂」の問題を考える必要がある。日本の文学で日本人の魂の問題を語っているのは『源氏物語』である。『源氏物語』では、ふだんは情けなくても、いざというとき立派に見える人が大和魂の持ち主と述べている。では企業の場合、勇気がない人が勇気を持てるようになるのは、どのような場合か。(全12話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


企業における「自己信頼」の根源は「企業理念」である

自信について(3)理念や理想への共感が自己信頼の源

「自己信頼が高く」「自分を失わない」人はどのような人だろうか。挙げられるのは「心の中に理想として共鳴できる人」を持っているかどうかである。松下幸之助や出光佐三も、自分が理想として共感できる人を心の中に持っていた。自己信頼はアメリカの哲学者エマーソンが唱えた言葉で、そこには「神への信頼」があった。日本人の多くは、キリスト教的な絶対神を持っていないが、尊敬する人や先祖などとの「魂のつながり」が同じような役割を果たしている。企業においては「企業理念」が自己信頼の根源になるのである。(全12話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「すべてをありのまま受け入れる」から可能性を追求できる

自信について(2)「自信がない」から何でもできる

田村潤氏は自分の仕事ぶりを記録して、自分を「失敗する人間」と定義したという。だから失敗を潰すように努力することができたのだ。昔の実業家や成功者もみな「何もできない自分」と考えていた。「自分はダメ」と考えるから、全身全霊で体当たりして成果を出せる。成功した人が持っていたのは「自信」ではなく「勇気」である。勇気を持つために必要なのは理想を掲げ、信じることである。そして理想とは憧れであり追い求めるものであって、自信につながるものではないのである。(全12話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


豊臣秀吉でさえ自信を持ったら「バカなじいさん」になった

自信について(1)現代は「自信教」にまみれている

執行草舟と田村潤氏が、「自信」についてどう考えるべきかを論じあう対論。最近の日本は、とくに若い人で自分の仕事に自信がない人が多い。もちろん、そうなってしまった大きな要因としては、日本の大家族主義的な気風が失われてしまったことが大きく関係している。しかし一方で、戦後の日本社会では「自信を持たなければならない」という教育をしていたために、その反作用で、逆に自信を失った面もあるのではないだろうか。そもそも、「自信など持たないほうがいい」というのが日本の伝統的な考え方だった。豊臣秀吉も全国制覇して自信を持ったら、「バカなじいさん」になってしまった。(全12話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


なぜリベラルアーツが、ビジネスの成功に必要不可欠なのか

営業から考える企業戦略(6)「大義」と「野性の精神」

激動の現代にあって、日本企業はどのように乗り切っていくべきか。それにはやはり、「自分たちの会社は、こんなものではない、もっと高みに行くのだ」と挑戦する「勇気」が必要だと田村氏は言う。そして、そのような「大義」を実現するために必要なのは、「リベラルアーツ」であり、「あまり理解しようとせずに突き進む精神」だという。考えていてもわからない。自らの人間性を高めて、挑戦し、行動してくるうちに「わかってくる」。そうすることで、人間が本来持っている「すごい力」が生み出されていくのだ。(全6話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


シェア軽視の高付加価値経営や不利益部門の撤退がダメな理由

営業から考える企業戦略(5)切り捨てる経営の大失敗

日本企業の弱体化の原因はどこにあるのか。たとえば一時、「これから日本は低価格帯の商品は途上国に任せて、高付加価値経営を目指すべきだ」という議論が流行った。あるいは、「不採算部門は切り捨てるべきだ」という議論も盛んに行われた。その結果、現出したのは、すべてのジャンルで負けていく姿ではなかったか。田村氏は、「それは、理念が落とし込まれていなかったからだ」と喝破する。それはどのようなことなのか。(全6話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「営業はコスト」と捉えると失敗する。価値を生む源泉だ

営業から考える企業戦略(4)営業はコストではない

昨今、日本企業の中で「営業はコスト」として軽視される傾向がある。しかし、これは明確に間違いである。なぜなら、営業はイノベーションの源泉だからだ。そのためには、営業における基本の徹底として、「営業の基本」のレベルを「断トツなものにする」というイメージが必要だと田村氏は語る。それはどういうことなのか。営業が企業の中でいかに重要な役割を果たすものかという本質に迫る。(全6話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミッツTV編集長)


「個別の判断能力」を高めなければ、いい戦略でも失敗する

営業から考える企業戦略(3)個別の判断力をいかに高めるか

企業の戦略が正しいのに、結果として失敗している会社は数多くある。それは、「個別の判断力」に起因する。正しい戦略と個別の判断は違うものだと田村氏は言う。では個別の判断力を高めるにはどうしたらいいのか。また、本社勤務が続くと失われてしまいがちな「現場感覚」をいかにして補い、維持し続ければいいのか。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


オーバーアナリシス、オーバープランニングを「直観」で破る

営業から考える企業戦略(2)データより現場のリアリティ

日本企業の不振の主な原因は3つある。「オーバーコンプライアンス」「オーバーアナリシス」「オーバープランニング」だ。企業の戦略において、現状分析と翌年の計画を立てるためにもデータは欠かせないが、分析のしすぎはおかしい。なぜなら、データは、過去の自分たちの行動の結果に過ぎないからだ。大事なのは、現場で無意識的に感じられるモヤモヤとしたものであり、そこから生み出される「直観」なのである。それこそが現場のリアリティであり、現場の創造性だと田村氏は強調する。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


ブランド力を高めるために「自社の強み」を徹底的に聞け

営業から考える企業戦略(1)成功するブランド戦略とは?

キリンビールで副社長兼営業本部長として指揮を執り、2009年にシェアの首位奪回を成し遂げた田村潤氏に、営業の立場から経営戦略をいかに考えるべきかを聞く。第1話はブランド戦略の極意についてである。キリンビールは「大ブランド」ではあるが、アサヒビールの「スーパードライ」に圧倒された時期は、これまでの強みがまったく生かせなくなり、どんどんブランド力が落ちていった。その最も苦しい時期に高知支店長となった田村潤氏。そこから、キリンビールは見事にブランド力を回復させたわけだが、そのポイントはどこにあったのか。(全6話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「ノウハウ」では勝てない。大切なのは「スタイル」である

営業の勝敗、キリンの教訓(7)「内在的な論理」に応える

「キリンの理念の実現」に向けて、組織を動かす中で、どうしようもない事態に陥ることがある。たとえば、キリンビール本社から「お金を使ってはいけない」と指示がきたことがあったが、資金がないなかで四国支店は、その他の支店と圧倒的な差をつけて業績を伸ばすことに成功する。なぜ、これほどまでに理念の実現にむけた活動が大きな力を発揮できたのだろうか。その秘密、営業の極意とは? (全7話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


やられたら「倍返し」。一斉に攻めて、攻め切ってしまう

営業の勝敗、キリンの教訓(6)ライバルに圧勝した背景とは

「理念の実現」へと動きだし、キリンビールの巻き返しが始まった。そうすると、当然のようにライバル会社が対抗してくる。それには、どのように立ち向かったのだろうか。キリンビールがライバル会社をもろともせずにシェアを拡大することができた、その真相とは。 (全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「自由」がないと「行動する勇気」はわいてこない

営業の勝敗、キリンの教訓(5)心に火がついた3つの要因

一致団結して、企業理念の実現へと行動し始めることができたキリンビール高知支店の社員たち。当時を振り返ると、自分たちの心に火がついた要因が「3つ」あったという。その内容と、組織のリーダーがなすべきことは、いったい何だったのか。 (全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


どんどん知恵が出て、百戦百勝になるとっておきの方法

営業の勝敗、キリンの教訓(4)お客様本位で行動する

キリンビールの売り上げを伸ばすために、現場で試行錯誤を繰り返し、ようやくたどり着いた自分たちが目指すべき理念の実現。しかし、それを社員たちに話すも、当初は理解されなかったという。田村潤氏はどのようにして社員全体に浸透させたのだろうか。その具体的経緯に迫る。 (全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


精神論は不可。「理念が実現した状態」を具体的に定義せよ

営業の勝敗、キリンの教訓(3)理念は単なるきれいごと?

会社にとって重要な「利益追求」だが、しかし、「利益追求」だけでは、社員は動かない。かといって「理念」を唱えているだけでも、社員や組織は一歩も動けない。では、どうすればいいのか? それは具体的に、どのような行動に移すことなのか? キリンビール高知支店を例に、企業理念を具体化させ、成功へと導いていった手法に迫る。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


自分のためには頑張れないが、誰かのためには頑張れる

営業の勝敗、キリンの教訓(2)「自立性」こそがカギだ

日本のサラリーマンが「指示待ち」になってしまうのは、入社してからの習い性であり、「自立性」を身に着けるのは難しい。だが、「やる気のある社員をつくる」ためには、自立性を持つしかない。しかも、明治期の日本人を振り返れば、自立性はけっして日本人が不得手とするものではなかったことがわかる。ではキリンビール高知支店では、どのように社員の自立性を引き出していったのだろうか。その真相に迫る。 (全7話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


なぜ「やる気のある社員」が日本では6%しかいないのか?

営業の勝敗、キリンの教訓(1)やる気のない社員になる理由

ベストセラー『キリンビール高知支店の奇跡』の著者で元キリンビール副社長であった田村潤氏に、キリンでの経験と営業の勝敗を分けるポイントを聞く。田村氏がかつて高知支店に配属された1995年は、キリンビールがまさに窮地に陥っていた最中だった。当時、アサヒビールのスーパードライが市場を席捲したからだが、しかし田村氏いわく、危機の淵源は“キリンらしさ”が失われ、社員の自律性も失われてしまっていたからだという。なぜ“キリンらしさ”は失われてしまったのか。そもそも、現代の日本人はなぜ仕事への熱意を失っているのだろうか――。(全7話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


すべてを受け入れることで、他者のために生きる自己が実現する

真のやる気とは何か(14)「素直な心」が強さを創る

「真のやる気」について長い時間を語り合った末に、執行氏と田村氏がたどりついたのが「他者のために生きる」「素直な心」というキーワードだった。日本の根幹にある「他者のために」という心を取り戻せば、自らの使命が明確に見えてくる。「素直な心」があれば、自分の宿命を受け入れ、背負うことができる。そして、そこから真のやる気、真の勇気が湧き上がってきて、自分の人生を力強く歩めるようになるのだ。(全14話中第14話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「自分が幸福になろう」と思うと、一気に不安が押し寄せる

真のやる気とは何か(13)自由と勇気の源、不安と臆病の源

企業で働く人も、経営者も、官僚や政治家も、みな幸せになりたいと願うことで幸福病になっている。結果、人は臆病になり、少しのリスクも許容できなくなるという。そうなれば当然、勇気は湧いてこないばかりか、幸せにもなれない。だからこそ、逆説的ではあるが、現代の日本人に必要なのは、失敗する覚悟であり、不幸を受け入れる覚悟なのだ。(全14話中第13話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「お客さんに喜んでもらうため」と考えると工夫が生まれる

真のやる気とは何か(12)業績と幸せは両立できる

アメリカはなぜ無謀ともいえる独立戦争に挑んだのか。彼らを戦いに駆り立てたのは、可能か不可能かという判断ではなく、「自由か、然らずんば死か」という覚悟に他ならない。同じく、高知キリン支店は、2700軒の飲み屋を回るという一見不可能な課題に挑戦したが、結果、見えてきたのは、「お客さんのため」と考えてどんどん工夫をし、勝ちつづけて、そこに自分たちも強烈な幸せを感じるという好循環だった。会社の利益と個人の幸福は両立できるのである。(全14話中第12話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


理念を自分の腹に落として行動していく「野獣性」の大切さ

真のやる気とは何か(11)生き方ではなく、死に方を考える

いかに生きるべきかを考えるのが文学だが、生き方は「死に方」を定めなければはっきりしない。「自分はいかに生きるべきか」ばかりを考えていると、エゴイズムに陥ってしまう。一方、「死に方」を考えると、「誰かのため」ということが自ずから出てくるものである。また、昔の日本人が持っていた死生観、アンドレ・ジードの小説に通底するテーマ、そしてパナソニック創業者の松下幸之助の凄みを見ていくと、単なる「知性」だけでなく、それと共に、理念を自分の腹に落として断固として行動していく「野獣性」が大切であることもわかってくる。エゴイズムに陥らない「真のやる気」を探る。(全14話中第11話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


文学なき「やる気」は、振り込め詐欺のごとき愚劣なものになる

真のやる気とは何か(10)旧制高校出身者がいた時代の良さ

キリンビールの現場にいた田村潤氏は、ちょうど日本がバブルに沸き立つ前後から、社内会議の質が急激に低下するのを実感したという。それ以前と以後の違いは、「旧制高校出身者の有無」だった。執行草舟氏はその事実を、文学と哲学の喪失と指摘する。文学のない「やる気」は、振り込め詐欺のような、浅ましいものに直結しかねないのだと。果たして、現代日本に生きる私たちのとるべき方策とは?(全14話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


西郷隆盛は過去をすべて背負ったからこそ、偉大になった

真のやる気とは何か(9)問題を切り捨てず、受け入れよ

企業も人も「良い部分」だけ残して、「悪い部分」を切り捨てるのでは大成しない。あの西郷隆盛もまた、親の借金から逃げずに、生涯をかけて返済しようとしたそうだ。組織が窮地に陥ったとき、逃げずに宿命を背負う覚悟のある人だけが、運命を動かすことができる。 (全14話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


真の自由と気高さを与えたから、部下たちの心に火がついた

真のやる気とは何か(8)必要なのは「自由」と「気高さ」

田村潤氏は、よく、「なぜ部下たちの心に火がついたのですか」と聞かれるという。2人の対談から見えてきたことは、「真の自由」そして「気高さ」を徹底的に部下に与えていたことである。それはいずれも、どこまでも「理念」を追及したから現出したものであった。現代的にいえば、安全、安心で危険のない状態こそが幸せなのかもしれないが、そこからは本来、気高いはずの人生は見えてこない。自由を求めたアメリカの独立戦争、あるいは国のために日露戦争を戦った人々にあって、私たち現代人にないものは何だろうか。(全14話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「理念によるマネジメント」で運命を切り拓く

真のやる気とは何か(7)真のやる気は「根っこ」から

宿命の「汚い部分」「嫌な部分」に真っ正面から体当たりしないと、自己信頼には至れず、運命も切り拓くことができない。それは「日本の宿命」を考えても同じである。成果主義、企業統治改革、西洋合理主義、はたまた明治時代に輸入した法律など、本当の意味で「日本人の身の丈に合わないもの」を取り入れたところで、もたらされる結果はマイナスになることが多いのである。失われたものを取り戻す「精神の復活」なくして、国もビジネスも人も理念を掴むことはできない。(全14話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


リーダーには「嫌なこと」を納得させられる力が必要である

真のやる気とは何か(6)どぶ板営業の徹底で理念が生きた

組織というのは、決めたことをやり切ることで初めて成立する。それにもかかわらず、田村氏が支店長として赴任した高知支店は、実行力のない中途半端な状態だった。そんな中、「家に帰るな」「眠るな」という一喝によって、組織は徐々に良い方向に変わっていく。高知支店の奇跡は、厄介なもの、ドロドロしたものを徹底したからこそ、美しい理念をストンと腹に落とすことができ、人生を好転させることができた好例といえるだろう。(全14話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


大左遷の「原因」こそが、大飛躍の「推進剤」だった

真のやる気とは何か(5)自分の「短所」は「長所」でもある

物事には良い部分と悪い部分がある。それは企業も人も同じで、ついつい悪い部分、弱点の補強をしたくなるものだ。しかし、良いものと悪いものは表裏一体で、同じものをどちらから見るかの違いにすぎない。だから、悪い部分を潰そうとすると、良い部分まで消し去ってしまう。良い部分、悪い部分を一体のものとして捉え、分析的ではなく、総合的に考えることで初めて、物事は動き、道は開ける。(全14話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


裏の汚い部分を引き受けねば「きれいごと」は実現できない

真のやる気とは何か(4)蓮の花は泥沼の中から咲いてくる

「本社の方針が間違っている」「上司が悪い、許せない」と愚痴をいうのはビジネスパーソンの常かもしれない。しかし、それだけでは真のやる気は生まれない。宿命というのは、決して美しいだけのものではなく、その裏には汚さや悪い部分がある。それすらも認め、受け入れなければ、「きれいごと」など誰も信用しないし、実現しない。きれいなものを実現するためには、汚いことを、責任を持って飲み込まなければいけないのである。(全14話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


キリンビール高知支店はいかに大企業病から這い上がったか

真のやる気とは何か(3)大企業病脱却のための処方箋

あらゆる組織が罹患する可能性のある大企業病。その例外ではなかったキリンビール高知支店は、いかにそこから這い上がり、V字回復したのか。そこには、自分たちの土台に立脚し、運命を感じて、主体的に動いていったプロセスがあった。1人ひとりが自分の宿命を受け入れたからこそ、自分の運命を主体的に動かすことができたのである。(全14話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「自己信頼」と「わがまま」の違いをもたらすものは何か?

真のやる気とは何か(2)エマーソンの「自己信頼」に学べ

「真のやる気」というものは、簡単そうでいて、実は簡単ではない。そのことを考えるのに参考になるのが、アメリカの詩人で哲学者のラルフ・ウォルド・エマーソンが説く「自己信頼」の考え方である。エマーソンの「自己信頼」は、アメリカ・プロテスタンティズムに立脚したものだが、これは日本の武士道とも濃厚な共通点がある。「下品なやる気」にならないために必要な「歴史を重んじる精神」について取り上げる。 (全14話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)


下品にならない「やる気」の秘密はロマンティシズムにある

真のやる気とは何か(1)キリンビールに受けつがれる武士道とは?

実業家であり著述家でもある執行草舟氏と、元キリンビール副社長の田村潤氏が、「真のやる気」について語り合う。田村氏はキリンビールが、アサヒビールのスーパードライに押されて最も苦戦していた時期に高知支店長となり、現場のやる気を高めてシェア奪還に成功。その後、四国4県、さらに東海地区でも営業責任者として実績を上げ、キリンビール代表取締役副社長になった。なぜ、どのようにして現場のやる気を高めることができたのか。その背景には、キリンビールの原点に息づいていた武士道精神があった。その精神があればこそ、キリンビールのやる気は下品ではなく、品格があるのである。キリンに脈々と引き継がれる「ただひたすらにおいしいビールをお客さまのために」というロマンの源泉に迫る。(全14話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)