宮坂昌之

大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授/大阪大学名誉教授

プロフィール

【略歴】
1947 年 長野県生まれ
1973 年(昭和48年)京都大学医学部卒業
1973 年 田附興風会北野病院内科勤務
1974 年 金沢医科大学血液免疫内科助手
1977 年 オーストラリア国立大学 John Curtin 医学研究所博士課程入学
1981 年 同課程修了、PhD(免疫学)取得 
1981 年 スイス・バーゼル免疫学研究所メンバー
1986 年 浜松医科大学第二解剖学講座助手
1987 年 (財)東京都臨床医学総合研究所・免疫研究部門・室長
1992 年 同上・部長
1994 年 大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター臓器制御学研究部・教授
2001 年 機構改革により大阪大学大学院医学系研究科細胞分子認識分野・教授
2005 年 機構改革により大阪大学大学院医学系研究科感染免疫医学講座・免疫動態学・教授
2005 年 大阪大学大学院生命機能研究科・兼任教授
2008 年 大阪大学免疫学フロンティアセンター・兼任教授
2010 年 (独立行政法人)科学技術振興機構 CREST「慢性炎症」・研究総括
2012 年 大阪大学大学院医学系研究科・定年退職
2012 年 大阪大学未来戦略機構第二部門「生体統御ネットワーク医学教育プログラム」・特任教授
2013 年 フィンランド国アカデミー・FiDiPro 教授(併任)
2013 年 大阪大学免疫学フロンティア研究センター・招へい教授
現在に至る

【主な著書】
『分子生物学・免疫学キーワード辞典』(医学書院、共著)
『標準免疫学』(医学書院、共著)
『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か』(ブルーバックス)
『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ』 (ブルーバックス)

講義一覧


なぜ持病を持っている人は重症化しやすいのか

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(11)インフルエンザとの比較

行動様式の変容は、今後の新型コロナウイルス対応において最も重要な点であり、これを徹底すれば多くの活動は再開できるだろう。しかし、ウイルスが消滅したわけではない。季節性インフルエンザと似ているようだが、慢性的な炎症を悪化させたり、異物の進入を知らせる警報物質に関連する「サイトカイン」が正常に働かなかったりするなど、新型コロナウイルスのほうが危険性は高い。そのことを十分に理解した上で、ウイルスと共存するという認識を持たなければならない。(全11話中第11話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


第2波、第3波が来ても感染拡大を最小限におさえるために

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(10)新しい行動様式の受容

これからの感染拡大を防ぐために、社会はどのように対応していけば良いのだろうか。接触制限をすることはもちろん有効だが、今回は8割の接触減でなくても終息へと進めることができた。ワクチンや薬の開発は非常に有効だが、安全性や効果が高いものを実用化するには2年程度、時間がかかる。最も重要なのは、私たち自身が新しい行動様式を受け入れることで、そうすれば第2波、第3波が来ても、感染拡大を最小限におさえることにつながるだろう。(全11話中第10話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「スーパースプレッダー」が分かれば、感染拡大の防止は可能

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(9)鍵は「スーパースプレッダー」

蓄積されてきたデータを分析すると、感染者の多くは他人に感染させておらず、少数の感染者が多くの人に感染させていることが分かってきた。1人で多くの人に感染させる人を「スーパースプレッダー」と呼ぶが、彼らを検知するために、迅速かつ容易に行うことができる抗原検査が役立つ可能性がある。今後もクラスター解析や濃厚接触者の確認などを通じて、スーパースプレッダーの存在を見つけていくことが、感染拡大を防ぐ第一の道である。(全11話中第9話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


新型コロナにも可能性のある「ウイルス感染の再燃」とは

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(8)感染性の有無と持続感染の懸念

新型コロナウイルス対策のためには、感度の高い試薬が必要となる。現在、急ピッチで開発が進められているが、善玉抗体だけを見分ける試薬はまだ開発されていない。また、検査で陽性となっても、発症から一定期間経過した人から出るウイルスにはほぼ感染性がないことも分かってきた。ただし、持続感染の可能性もあるので、引き続き慎重に対応策を考えていく必要がある。(全11話中第8話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


免疫パスポートの交付は抗体量を測定するだけでは難しい

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(7)免疫と検査の実態

一口に免疫といっても、抗体に関していえば、善玉と悪玉などの違いがあり、それ以外の免疫系の働きも無視できない。総合的に見て、個人の免疫力の有無を正確に判断する方法はまだ存在しない。PCR検査や抗原検査も、検査対象、コスト、時間などさまざまな面で長所と短所があるので、これらを組み合わせて効果的な感染拡大防止対策を考えていく必要がある。(全11話中第7話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


抗体ができても、病原体を殺す善玉抗体だけとは限らない

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(6)抗体の種類とワクチン開発

コロナウイルス対策として抗体の重要性が叫ばれるようになったが、その実情はよく知られていない。抗体には実は、善玉抗体や悪玉抗体など複数あり、実際に感染拡大を抑えるものだけではなく、逆に感染を促進させてしまうものもある。それを見極めるためには、さまざまな実験を通じて、確かなデータを集める必要がある。拙速なワクチンの開発と実用化は、感染拡大を招く危険性があるため、避けなければいけない。(全11話中第6話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


私たちの免疫能力は後天的に決まるのか遺伝によるものなのか

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(5)集団免疫獲得と地域差

スウェーデンは、強い自然免疫力を持つ人たちによる集団免疫の獲得を目指して生活への制限を極力行わない方針を取ったが、その代償として日本よりも多くの死者を出した。一方、日本は比較的緩い制限でとどめたが、良い結果を得ているのであればそれでも十分かもしれない。では、予防接種によって自然免疫が刺激された場合、どの程度効果が持続するのだろうか。これについては、BCGの集団接種を行っている国とそうでない国の違いや、その中でも地域差があるという。(全11話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


「ウイルスによって免疫持続期間が異なる」という免疫学の謎

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(4)ワクチンと免疫持続期間

予防接種が子どもの自然免疫を上げることに役立っている可能性は、大人や高齢者にも当てはまることである。また、新型コロナウイルスの免疫持続期間は比較的短いが、その理由はよく分かっていない。ただ、生活様式の変化やワクチン開発によって、集団免疫の達成を目指すことは可能であると、宮坂昌之先生は強調する。(全11話中第4話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


予防接種は新型コロナウイルス感染拡大を抑制しているのか

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(3)社会的環境と予防接種

感染症における基本再生産数は、感染拡大に関する重要な指標である。しかし、その数値は対人距離によって変わり、また社会的環境によって実際の再生産数(実効再生産数)は大きく変動する。集団免疫については、BCGに代表される予防接種が新型コロナウイルス感染拡大を抑制しているのではないかという議論がある。予防接種は私たちが持っている自然免疫にどんな影響を与えているのか。宮坂昌之先生に伺った。(全11話中第3話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


集団免疫の形成には社会の構成者の6割の感染が必要なのか

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(2)集団免疫の新しい考え方

個人レベルでの免疫の獲得は重要だが、それ以上に重要なのが集団としての免疫の獲得である。集団内で免疫を持っている人がある程度いれば、大きな感染拡大は起こらず、社会不安を防ぐことができる。集団免疫に関しては、新旧2つの考え方があり、古い考え方は現在の免疫学からかけ離れているという。いったいどういうことなのか。(全11話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)


まず「病原体を防ぐからだのメカニズム」を知ることが重要

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(1)自然免疫と獲得免疫

新型コロナウイルスは私たちの生活に大きな影響を与えているが、これから社会をどう平常化していけばいいのか、「免疫」という視点から考えるシリーズ講義。まず私たちのからだは、「自然免疫と獲得免疫」という二段構えの免疫機構が備わっていることを押さえておくことが重要だ。この免疫機構の働きを正しく理解することが、ポストコロナの社会を生きていくために重要である。(全11話中第1話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)