山田康弘

東京都立大学人文社会学部人文学科歴史学・考古学教室 教授

プロフィール

<プロフィール>
1967年東京都生まれ。

【学位】
博士(文学)(総合研究大学院大学) 【2007年取得】

【学歴】
筑波大学第一学群人文学類 【1990年卒業】
筑波大学大学院博士課程歴史人類学研究科文化人類学先史学専攻 【1994年中退】

【職歴】
1994年 熊本大学文学部文部教官助手
1996年 土井ヶ浜遺跡人類学ミュージアム学芸員
1999年 島根大学法文学部助教授
2010年 島根大学法文学部教授
2011年 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立歴史民俗博物館研究部准教授
2015年 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立歴史民俗博物館研究部教授
2020年 東京都立大学人文社会学部人文学科 歴史学・考古学教室 教授

【専門分野】
先史学

【主な著書】
『縄文時代の歴史』 (講談社現代新書、2019年1月)
『縄文人の死生観』 (角川ソフィア文庫、2018年6月)
『つくられた縄文時代: 日本文化の原像を探る』 (新潮選書、2015年11月)
『縄文人がぼくの家にやってきたら!?』(実業之日本社、2014年2月)

講義一覧


高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化

概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見

縄文時代研究の最前線に関して概説的に講義するシリーズレクチャー。第1話の今回は、現在まで高校の日本史などで事実として捉えられてきた縄文時代に関する通説が、最近の新たな発見によっていかに覆されつつあるかという点について解説する。具体的には、縄文時代の時間幅の変化、縄文文化が持っていた高い技術、そして階層性が存在していた可能性について論じる。(全13話中第1話)


縄文時代の始まりはいつから?…三つの説の特徴とは

概説・縄文時代~その最新常識(2)縄文時代の開始時期に関する三つの説

技術の進歩や新たな考古学的発見によって、縄文時代の年代や文化に関する従来のイメージは大きく変化することになった。その結果、いつから縄文時代が始まったのかという重要な論点に関して、三つの異なる説が生まれてくることとなった。講義の焦点は、土器の出現と気候の変化が、縄文時代研究に与えた役割に移る。縄文時代という古い年代のことであっても、新たな発見によって知識は日々更新されているという知的好奇心を刺激する事実を教えてくれる。(全13話中第2話)


縄文時代の始まりと終わりはなぜ定まらないのか?

概説・縄文時代~その最新常識(3)縄文土器・縄文文化をめぐる議論

縄文土器はどこから来た文化なのか、というのは難しい問題である。各地で出土した土器の年代を比較すると、実は日本国内で発明されたものであるという説が有力である。加えて、縄文時代の始まりと終わりに関してもいまだに議論が続けられている。(全13話中第3話)


縄文人と現代人を比較すると、どれほどの違いがあるか?

概説・縄文時代~その最新常識(4)縄文人の身体的・遺伝的特徴

縄文人とはどのような人々だったのだろうか。身体的特徴から見ると、現代人よりもたくましいが、日本列島内部での差異はほとんど見られない。しかし、DNAの分析手法の発展により、遺伝子解析を行えるようになった結果、南北で顕著な遺伝的多様性が見られることが分かった。現在、われわれのイメージする縄文人の容貌の多くは想像によるものであるが、さらなるDNA解析によって、近いうちにより実際に近い姿が捉えられるようになるだろう。(全13話中第4話)


縄文時代の大きな特徴は定住生活…その生活スタイルとは?

概説・縄文時代~その最新常識(5)定住生活のはじまり

縄文時代の大きな特色は、定住生活を開始したことである。気候の変化や土器の発明によって、1カ所で継続的に食糧を調達できるようになり、縄文人は徐々に定住生活を選択するようになった。ただ自然のものをそのまま利用するだけでなく、より持続的な生活環境を作るために自然に介入していた形跡も見受けられる。定住生活が当たり前のものとなっているわれわれ現代人の目には、山田康弘氏が語る縄文時代の生活の変化は興味深く映るはずだ。(全13話中第5話)


縄文時代早期の「定住革命」は現代まで影響を与える画期

概説・縄文時代~その最新常識(6)定住革命

定住生活が始まると、さまざまな方面で定住生活文化が成熟していく。貝塚や作業場の設置、水路などのインフラ整備といったハード面の発展から、呪術や儀式、社会的な取り決めといった社会的・精神的なソフト面の発展まで、その範囲は幅広い。今回の講義を視聴すれば、「定住革命」と呼ぶこの画期が、現代の生活にまで大きな影響を与えていることが分かるだろう。(全13話中第6話)


秋の収穫から1年間の食料計画を立てていた縄文人

概説・縄文時代~その最新常識(7)厳しい環境下での食料計画

水田稲作などの農耕生活にまだ入っていない縄文人にとっては、食料をどのように調達するかという点は非常に重要な課題であった。彼らは最も食料が不足する春や初夏に備えて、木の実などの収穫時期である秋から1年間の食料計画を立てていたのである。また、安定して食料を消費するために、保存や狩猟に対してもさまざまな工夫をこらしていた。(全13話中第7話)


なぜ環状集落は東日本で発達した?縄文時代の「都市計画」

概説・縄文時代~その最新常識(8)縄文時代の人々の集落

縄文時代の人たちは、どのような集落に住んでいたのだろうか。縄文時代の典型的な集落としてイメージされるのは、竪穴住居や中央広場があることなどだが、一集落あたりの住居数や集落自体の内容(都市計画)は東日本と西日本では大きく異なるという。はたしてそれはどのような差なのか。縄文人の集落事情に関して解説する。(全13話中第8話)


縄文時代の「結婚、家族」を探る…現代との大きな違いとは

概説・縄文時代~その最新常識(9)縄文時代の家族像

縄文時代、「家族」はどのようなものであったのだろうか。当時の社会状況を考えると、結婚相手は生まれた時点であらかじめ決められていた可能性が高く、現代のいわゆる自由恋愛は基本的になかったと考えるのが自然だという。また、家族の形態としては、出土した人骨などの分析から、現代のような核家族だけでなく、祖父や祖母などを加えたいわゆる拡大家族が縄文時代の基本単位であっただろうと考えられる。(全13話中第9話)


縄文人の「第二の道具」と呼ばれる土偶、石棒の意味と目的

概説・縄文時代~その最新常識(10)縄文時代の精神文化

縄文時代の精神文化に影響を与えたのは、定住性の強弱と人口の多寡。人口が多く、定住性も非常に強いと考えられる東日本では土偶や石棒が急激に発達したが、これらは二種類に分けることができる縄文人の道具の中で「第二の道具」と呼ばれるものだ。「第二の道具」はどんな特徴を持ち、土偶や石棒は何を表現したものなのか。(全13話中第10話)


土器埋設遺構に反映されている循環的な思想

概説・縄文時代~その最新常識(11)土器埋設遺構と土器棺墓

縄文時代の精神文化をより詳しく見ていくと、男女の性差の二項対立とともに、出産や再生をモチーフとした文化体系が浮かび上がってくる。山田康弘氏は土器埋設遺構のさまざまな例を挙げて、自然の中における人間生活の再生や循環が縄文人の精神文化において大きな位置を占めていたことを鮮やかに描き出す。(全13話中第11話)


多数合葬・複葬墓は縄文時代のモニュメントだった!?

概説・縄文時代~その最新常識(12)多数合葬・複葬墓の意義

縄文時代も年代が下るにつれて、自然の中での循環と再生という死生観とともに、先祖から連なる直線的な関係を重視する系譜的な死生観の重要性が大きくなってくる。これは、気候の寒冷化によって血縁集団が解体したのち、温暖化に伴って地縁的な集団が支配的になったことと関係があるという。多数合葬・複葬例は、地縁的な集団の「先祖」を意図的につくり出し、結束を高めようとする営みの一環だった。(全13話中第12話)


再生・循環と系譜…現代に受け継がれている縄文人の死生観

概説・縄文時代~その最新常識(13)二つの死生観

縄文時代にはまず再生・循環の死生観があり、その後、系譜的な死生観が発展してきた。しかし、系譜的な死生観は再生・循環の死生観の一部を切り出したものにすぎず、状況に強いられて発展してきたものであった。現代でも、系譜的な死生観に代わって、再生・循環の死生観が担う役割が大きくなってきている。シリーズ最終話では、縄文時代の精神生活が現代人の精神に及ぼしている影響について解説する。(全13話中第13話)