黒田基樹

駿河台大学法学部教授/日本史学博士

プロフィール

1965年東京生まれ。
【学歴】
1985/04~1989/03 早稲田大学 教育学部 社会科地理歴史専修 卒業 教育学士
1990/04~1992/03 駒澤大学 人文科学研究科 日本史学専攻 修士課程修了 文学修士
1992/04~1995/03 駒澤大学 人文科学研究科 日本史学専攻 博士課程単位取得満期退学
1999/03/10 駒澤大学 博士(日本史学)
(学位取得)

【主な職歴】
1992/07~1995/03 日本学術振興会 特別研究員DC2
1995/04~1998/03 日本学術振興会 特別研究員PD
1998/04~2009/03 駒澤大学 文学部 非常勤講師
1999/09~2003/03 立教大学 文学部 非常勤講師
2004/09~2008/03 立教大学 文学部 兼任講師
2005/04~2005/08 千葉大学 文学部 非常勤講師
2007/04~2008/08 首都大学東京 都市教養学部 非常勤講師
2008/04~2012/03 駿河台大学 法学部 法律学科 准教授
2012/04~ 駿河台大学 法学部 法律学科 教授
2013/04~2015/03 早稲田大学 教育学部 非常勤講師

【専門分野】
日本史(日本中世史・日本近世史)

【主な著書】
『戦国大名・伊勢宗瑞』
『真田信之』
『羽柴を名乗った人々』(KADOKAWA)、
『今川氏親と伊勢宗瑞:戦国大名誕生の条件 (中世から近世へ) 』
『戦国大名』(平凡社)、
『戦国北条五代』 (星海社新書)、
『戦国北条家一族事典』
『戦国北条氏五代』(戎光祥出版)、
『戦国大名の危機管理』(吉川弘文館)、
『百姓から見た戦国大名』(ちくま新書)、
『戦国大名北条氏の領国支配』(岩田書院)、
『中近世移行期の大名権力と村落』(校倉書房)、
『真田昌幸』(小学館)、
『北条氏康の家臣団 (歴史新書y)』
『「豊臣大名」真田一族』(洋泉社)、 など。

講義一覧


戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること

百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境

戦国時代とはどのような時代だったのか。過去の資料から見るとまず浮かび上がってくるのは、この時代の人々は、季節性に左右された周期的な大飢饉に生存を脅かされていたということである。それゆえ民衆にとっての課題は、常態化した大飢饉においていかに生き延びるのかということであった。(全8話中第1話)


民衆にとって生命維持装置の役割を果たしていたのは「村」

百姓からみた戦国大名~国家の本質(2)「村」という組織の重要性

過酷な生存状況を民衆が生き延びるために重要な存在だったのが、村という組織である。村は百姓たちが集まってできた支援的な共同体であり、各家の私権を制約する公権力としても存在していた。この村を単位に、領主は生産資源をめぐって争い、戦が生じた。これが、既存の政治秩序を解体していったのである。(全8話中第2話)


戦国時代、城郭が恒常的に存在するようになった二つの意味

百姓からみた戦国大名~国家の本質(3)統治権力と城郭の新しい役割

戦国大名の構造として重要なのは、戦争の恒常化に伴い、城を拠点にした領域が形成されたということである。これによって軍事拠点としての城郭が恒常的に存在するようになり、そこに政治拠点としての性格も付与されるようになる。こうした領域権力の確立は、戦国大名が統治下にある全ての村落に対して戦争費用を負担させるようになることも意味した。(全8話中第3話)


「給人も百姓も成り立つように」に表れる戦国大名の在り方

百姓からみた戦国大名~国家の本質(4)家中の形成と村の役割

戦国大名の構造として、家来組織である「家中」の構築と管理も重要である。戦国大名は家中構成員の自力による解決を禁止。彼らが抱えている問題については全て戦国大名が裁判で解決をすることになったので、個別の領主の存立を主人である大名に依存させるという仕組みが構築されていった。これにより家中と村を同時成立させ、村の存立を保障することで、戦国大名の地位を確立していった。(全8話中第4話)


戦国大名と領国内の村との関係を大きく変えた「目安制」

百姓からみた戦国大名~国家の本質(5)「目安制」の導入

戦国時代においては、村の安定的な存続のために、対外戦争や飢饉災害に対して、さまざまな対策が講じられていった。その中でも重要なのは、大名が村に対して直接納税を求めるようになったことである。これによって、家来による不正徴収が防がれ、統一的な領国支配が確立していくのだが、その中で生まれたのが「目安制」と呼ばれる制度である。(全8話中第5話)


国中諸郡退転という危機…北条氏康の天文19年の政治改革

百姓からみた戦国大名~国家の本質(6)統一的な税制改革

村の安定的な存続のために、戦国大名は領国内で一律の制度をつくることを試みた。北条家の事例では、天文19年、北条氏康の政治改革によってそれが達成される。このきっかけとなったのは、地震災害によって生活費の工面ができなくなった百姓を統一的に救済する策の実施であった。(全8話中第6話)


北条家と武田家の全面戦争で顕著になった「御国」の論理

百姓からみた戦国大名~国家の本質(7)「御国」の論理の誕生

戦国大名の構造改革にとって重要なのは、目安制の導入である。これにより、室町時代にはなかった村による大名への直接訴訟権が認められ、万人(村)に開かれた裁判制度が成立した。また、これは村同士の戦争を抑止するものとなり、村が安定的に存続できるようになる。そこで生み出されていったのが「御国」の論理だった。(全8話中第7話)


羽柴秀吉の天下統一から始まった戦国社会の克服

百姓からみた戦国大名~国家の本質(8)戦国社会の克服

戦国社会はいかにして克服されたのだろうか。何よりもまず注目すべきは、慢性的飢饉による生産資源をめぐる戦争が、羽柴秀吉の天下統一によって停止されたことである。その後、17世紀に入り、江戸幕府や諸国の大名が構造改革を進めていく。そうして、戦争が起こらない環境がつくり出され、飢饉の際には大名による公的な融資が確立していった。(全8話中第8話)