片田敏孝

群馬大学名誉教授

プロフィール

昭和35年 岐阜県生まれ
平成2年:豊橋技術科学大学大学院博士課程修了
平成2年:東海総合研究所 研究員
平成3年:岐阜大学工学部土木工学科 助手
平成5年:名古屋商科大学商学部 専任講師
平成7年:群馬大学工学部建設工学科 講師
平成9年:群馬大学工学部建設工学科 助教授
平成12年4月~平成13年9月:京都大学防災研究所 客員助教授
平成13年4月~平成14年3月:米国ワシントン大学 客員研究員
平成17年:群馬大学工学部建設工学科 教授 
※平成26年:群馬大学大学院理工学府に所属名変更
平成22年:群馬大学広域首都圏防災研究センター センター長
平成29年:東京大学大学院情報学環 特任教授
群馬大学 名誉教授

■委員会・審議会等
・内閣府中央防災会議「災害時の避難に関する専門調査会」委員
・文部科学省:「科学技術・学術審議会」専門委員
・総務省消防庁「消防審議会」委員
・国土交通省:「水害ハザードマップ検討委員会」委員長
・気象庁:「気象業務の評価に関する懇談会」委員  などを歴任

■受賞歴
平成12年度 日本自然災害学会学術賞、横山科学技術賞
平成14年度 国際自然災害学会賞、土木学会論文賞
平成19年度 文部科学大臣表彰科学技術賞 
平成23年度 日本教育再興連盟賞、日本災害情報学会 廣井賞
平成24年度 内閣総理大臣表彰(防災功労者)、内閣総理大臣表彰(海洋立国推進功労者)
ヘルシー・ソサエティ賞
平成25年度 宮沢賢治 イーハトーブ賞
平成27年度 和歌山県知事表彰

■著書
・「人が死なない防災」 集英社新書
・「3.11釜石からの教訓 命を守る教育」 PHP研究所
・「子どもたちに『生き抜く力』を ~釜石の事例に学ぶ津波防災教育~」 フレーベル館
・「みんなを守るいのちの授業 ~大つなみと釜石の子どもたち~」 NHK出版

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
専門は災害社会工学。
災害への危機管理対応、災害情報伝達、防災教育、避難誘導策のあり方等について研究するとともに、地域での防災活動を全国各地で展開している。特に、釜石市においては、平成16年から児童・生徒を中心とした津波防災教育に取り組んでおり、地域の災害文化としての災いをやり過ごす知恵や災害に立ち向かう主体的姿勢の定着を図ってきた。平成24年には防災の功労者として2つの内閣総理大臣表彰を受賞、また平成26年には皇居に招かれ天皇皇后両陛下にご進講もしている。
また、内閣府中央防災会議や中央教育審議会をはじめ、国・外郭団体・地方自治体の多数の委員会、審議会に携わり、研究成果を紹介しながら防災行政の推進にあたっている。主な学会活動として、日本災害情報学会副会長、日本自然災害学会評議員がある。

講義一覧


東日本大震災の8年前から釜石で防災教育を行ってきた理由

釜石の子どもたちにみる防災教育(1)しっかり逃げる社会

大きな地震は周期的に起こってきたが、およそ100年間隔となるとその記憶を次の世代に引き継ぐことが難しいという問題が生じる。そこで、片田敏孝氏は東日本大震災の8年前から釜石で防災教育に取り組んできた。その結果、子どもたちは自発的に津波から逃げる動きを取ってくれたという。(全3話中第1話)


避難3原則で子どもたちに本当に教えたかったこと

釜石の子どもたちにみる防災教育(2)避難3原則の徹底

東日本大震災で子どもたちは、片田敏孝氏が伝えた避難3原則を実践。そのおかげで、ハザードマップの想定を超える津波の被害から逃れることができた。避難3原則で片田氏が子どもたちに本当に教えたかったこととは何か。(全3話中第2話)


「津波てんでんこ」の深い意味は家族の絆と信頼

釜石の子どもたちにみる防災教育(3)「津波てんでんこ」

釜石での防災教育として子どもたちに行ったのは、津波の記念碑のところに連れていき、先人の気持ちに想いを馳せることだった。東北地方には「津波てんでんこ」という言葉がある。そこには悲しい過去の繰り返しから生まれた災害の教訓が込められている。(全3話中第3話)


ハザードマップはなぜ十分に活用されていないのか

日本の防災の課題(1)大規模災害の増加とインフラの弊害

近年、大規模な自然災害が増えている。しかし、災害時にはハザードマップが十分に活用されているとはいえない状況もあるという。それはなぜか。そこにはインフラ整備が進んだことによって生じた、日本の防災の課題があった。(全3話中第1話)


行政主導ではなく、住民が主体となって行う防災への転換

日本の防災の課題(2)行政サービスから行政サポートへ

ハザードマップが正しく活用されないという課題が見えたことで、日本の防災対策は見直しが迫られた。覚えておくべきは、いくら対策をしてもリスクはゼロにはならないということである。そのためには行政主導ではなく、住民が主体となって防災を行わなければならない、と片田敏孝氏は語る。(全3話中第2話)


災害に主体的に向き合えるような社会をつくる

日本の防災の課題(3)災害に主体的に向き合う社会

防災で重要なことは、住民の防災意識やその知識だけではなく、実際に逃げることができるようにすることである。災害時に大事な人のことを考えて行動した結果、助からなかったケースも多い。防災対策ではこのような人間の行動も踏まえなければならない。片田敏孝氏が唱えるのは、コミュニティの連帯の強さによって主体的に災害に向かい合う社会の構築である。(全3話中第3話)


阪神淡路大震災によって露呈した行政主導による防災の限界

行政との関係構造から考える防災(1)行政主導の限界

日本の防災の基本は、1961年に制定された災害対策基本法から始まった。インフラが整備されていくことで被害者数は大幅に減少したが、その一方で防災に関する住民の行政への依存が進んでいったともいえる。阪神淡路大震災は行政主導による防災の限界を露呈させていた。(全2話中第1話)


思想なき防災の混迷状態にあるのが日本の防災の現実

行政との関係構造から考える防災(2)コミュニティ再構築

阪神・淡路大震災以後も行政主導の防災は継続されていったが、東日本大震災は行政による防災の限界を示すものとなった。日本の防災は今、思想なき防災の混迷状態にある。今後、地域社会において目指すべきは行政と住民とが一緒になって防災に取り組むことである。(全2話中第2話)


アメリカとキューバの防災から考える日本の防災の課題

海外の防災に学ぶ~アメリカとキューバの事例から~

日本の防災に課せられた最大の課題は、国民一人一人が災害に向かい合う主体性をどう取り戻していくのかということだ。これに対して、海外の防災はどうなっているのか。今回はアメリカ、キューバの防災を取り上げながら、日本の防災について考えてみたい。